生きた人でデスマスクを作っちゃいけない理由を実践した。~ハロウィン制作2018番外編

ハロウィン制作ノウハウ2018の番外編(副題:制作工程 頭部)


本まとめは、ちょっとした制作ミスへの判断ミスが、取り返しのつかなくなる寸前まで陥ったノンフィクションである。


デスマスク(death mask)とは。

死者の顔を石膏や蝋で型取ったものをいう。

作成目的には、故人を偲ぶ遺品、肖像作成のための一次資料、死生観・芸術性・性癖などを背景とした作品や調度品の主要素材、法医学的資料としての保存などがある。

有名人では、ツタンカーメン、エリザベス1世、ナポレオン、リンカーン、夏目漱石などがいる。

製法:死体の顔を石膏で覆う→剥がしてそれを型にして石膏を流し込む→顔ができあがる

ライフマスク(life mask)とは。

後年、化学技術によって主にアートや生前準備としてのマスクの作成が可能になった。

製法:顔を型取り材で覆う→変形防止に基礎の石膏で上塗りする→剥がしてそれを型にして石膏を流し込む→顔ができあがる


このたび私は、ハロウィン仮装に用いる目的で、まずは石膏のライフマスクを作ってから、それを用いて石膏の型を作り、そこにゴムを流し込んでつくる特殊メイクマスクの制作に挑戦した。

この時点では、それをどのように使うかまでの構想には特に至っておらず、作ってから考えるつもりだった。

基本は、水に溶いた材料を順番に使うのみ。当初は単身で行なおうと思ったが、とうてい困難なことが分かったので、家族に手伝ってもらうことに。

命を繋ぐ唯一のパイプとなる、太いストローでタピ活。

身内であろうと、他人に自分の命を預ける時には、何らかのビビりが発生するもの。

「ヨイヤサ!」こんもりっ♪

大胆にいくなぁ!(自分からは見えないけれど重みで分かった)

思ったよりも息はできる、ライフラインOK。

(でも…ストローの先を塞がれたら?ストローの先から水を注がれたら??)

顔面が埋まって、暗闇で神経が研ぎ澄まされている中、余計な不安があれよこれよと沸き起こってくる現象に遭遇した。

(さてと、そろそろ固まったかな…)

もういいかい?

…もう、いいかい??

・・・・・・・。

!!

固まらない??

どうやら分量を間違ってしまったらしい…。ダメだコリャ!

全て剥がし落として休憩し、対策の検討へ。

エステ後みたいな状態。

顔の皮膚には、全然よろしくないのだろうが。

さて、どうするか。

こちらもお願いをしている立場なので、家族を責めることは出来ない。

材料が切れたとはいえ、ここまで準備をしてムダにしてしまうのも勿体ない。

ということで…

今ある材料で、続けよう!\(´O`)/

「パパなにすんの?」と娘もドキドキ。

土手が高く築き上げられていく。

「んん流しますっ!!」

「えぇっ!?」

ドボドボドボ。。。

ここで、作業前リスクマネジメント危険予知KY活動を回想する。

「人間・デスマスク・制作・注意」で検索、検索…

「石膏による肌荒れ、肌ヤケには十分に注意をし、手に付いた場合はただちに水道で…」

「硬化に伴い発熱が生じ、肌に面していれば低温火傷の恐れもあるので…」

「死期が早まるという言い伝えがあって…」

「恨みを持つ者に致命的な怪我をさせたい場合に用いられ…」


えーと、後半はヨシとして、

手に付いたらNGのものが、万が一、目に入った場合ってどうなるんだろう。

このくらい粘性ある粒度ならば、体の穴の浸透は気にしなくても良いレベルっぽいかな。

途中で熱くなったりヒリヒリしたりしたら、辞めればよいだけか、それで間に合う話なのだろうか。

そういった顕在化させた残存リスクを、どれまで妥協するかを自問自答して、実行という運び。

じぃーーーーーっと待つ。


…ん~、やっぱり熱くなってきた。

ジュクジュクジュク、と。

じぃ~~~~。。。

液体が肌と一体化している感覚がある。大丈夫なのか??

熱いのか、ヒリヒリしているのか、皮膚が突っ張られて勘違いしているのか、よくわからない。


じぃーーーーー。

熱い、熱い、熱い!どうするか?辞めるか!?

もうちょっとだけ待ってみよう、もう少しならいけそう。

あれ?麻痺しているのかな?皮膚がベロンベロンになっていたりして!(笑)

いや笑えないなー、どうなんだろう?

私は身動き取れず一切しゃべれない状況なので、周りも全く興味を示してくれない。

私がいま、何を考えていて、何に悩んで何を聞いてもらいたいのかが、周りに届いていない。

妻子は近くにいるのか?気配はあるが何をしているのだろう?

何だか意識があるままの金縛りってこんな感じか。いや、これは自分で動いていないだけか。

近くにはいてくれってお願いしておけば良かったな。

あれ、もしかして目の前で息をのんで観察をしてくれていたりして。

いや、固まるのをじーっと見ていても意味ないから近くにはいないか。

うーん、熱い。。。。


どのくらい時間が経ったのだろう。

JOJO第2部のカーズではないが、ぼーっとして、何を考えていたのか忘れたころに、

「あれ、固まったみたい」との声。意識が覚醒。

「どうする?もう外してみる?」「(そうしてくれ)」

「あれ?寝てんのか?」「(動けんのじゃ!)」

「あ、動けないのか(笑)」「(指先をピクピクピク…)」

「OKだったら指先をピクピクさせてみて」「ピクピクピク…」

「パパ、動けないんだって(笑)面白いね(笑)」「ピクピクピク!!」

「じゃ、剥がすね、ね。」「ピクピクピク…」

ベリッ!ベリ、ベリ。「(ドキドキドキ…)」

ベリベリ!ベリツ

「うん、きちんと固まっているみたい。」「(ホッ。)」

「ふ~、割れなかったな。あとは自分で取ってな。痛さが分からないからな?」

「ふふふふ!♪」


ヨシ、あとはカポッてお面を外すだけだな。

てゆーか、もう固まったからもうちょっと自由に動いても良かったんだった。

いやー、外すか~、途中で息ができなくなったらどうしようかと思っちゃったよ!

恐る恐るの状態から解放されて、なんかハイテンションに。

「ウー!(石仮面だぞぉ~Uryyyyyyy!)」

「ウッ♪(こーんなカッコしちゃったりしてっ♪)」とか。

さて。いきますよ~♪

カパッ♪

せーの、カパツ♪

?????

カパツツツって!

??????????

アレ、どう、簡単には取れないのかな。

ん!…んんっ!

とっ!れっ!なっ!いっっっ!!

これはマズイ、いやシャレにならない、てゆーか苦しいっ

落ち着け、落ち着け、落ち着けっ

(過呼吸で鼻だけでは呼気量が追い付かない)

あ、でも顔面の筋肉を動かしまくっていたからか口元に冷風を感じた!

外気、外気だ。隙間ができて口からも息ができる、できるぞぉっ

良かった、でもちょっと息がしんどい、下向いて落ち着こう。

。。。。。ふー。

。。。。!

ゴボゴボッ

えっ!?あ、ちょっと戻ろう、上を向けっ!

ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、なに今の!

そう、パニック状態で錯乱していたし、目の前が真っ暗で状況が掴めなかったのだが…

全身が滝のように、あぶら汗でまみれていた模様で!

石膏の「おわん」に流れ込んだ顔面の汗が溜まって…

そりゃあ、口元のわずかな隙間などすぐ水没。

とはいえ、いつまでもこんなままではいられない。

妻子が必死に声をかけてくるが、何もしてやれないのも当然。

「ウー!ウー!!」(何かできるのか?できないならばだまっておけ、いや心配してもらって嬉しい、心の足しになっている、何かいいアイデアをくれないか??)

頭の回路がぐるぐる回る。


そして、密着しているフチの端っこから少しずつ剥がしていけないだろうか?と考える。

昔のガムテープを剥がして残った、ベッタリと付いてしまった粘着剤をコツコツ剥がしていく要領。

。。。時間をかければいけそうだ。

本当に、じっくり、時間をかけて、人差し指で少しずつ、剥がしていった。

結構、隙間もできてきた。

もう一回、下向きになってみた。息がしやすい。態勢も楽、これで続けよう。


少し時間が経つと息苦しくなってくるので、たまに垂直にする。

ボトボトッ…石膏に溜まった汗を流して、作業を続ける。

しかし指をこじ入れるにも長さに限界が出てくる。

妻子はただ、どうなるんだろうと見守るのみ。という空気を肌で感じる。

「割りばしとか、細い棒ない!?」それで密着した顔面の皮膚と石膏の間を剥がしていく。

コツコツと、テコのように、振動させながら。


するとあるとき…

カパァッ!っと顔面の下半分が一気に外れた!

顔面の表皮に一気に冷風が駆け抜ける。

「や、やったぁっ!!」

それと同時に、「痛っ!」と。眼球の周りに鈍痛が。

嗚呼、そうか。そうなのか!まつ毛と眉毛が、石膏と、一体になっていたのである。

思いっきり引っ張ってみるか?。。。。痛い、無理だ。

顔面の体毛を一気にブラジリアンワックスで脱毛する感覚だ。

これ、毛だけでは済まないかも。皮膚まで??

そう思った時に、犠牲とさせるべきなのは、見た目である。

「ウウッ!(ワシはオトコや。)」

もう、眉毛なんてなくても通用するだろう、気を遣われたらマジックで書けば良いだろう。

空手バカ一代のマス大山だってそうした。


そう思うと気が楽になって、ハサミを用意してもらって、密着している隙間のフチから差し込んで、自分の皮膚を切らないように、毛を切断していく。

でも見ながらやっているわけではないので、感覚でしかない。

ゴシゴシ、ゴシゴシゴシ…

突っ張り感が軽く失せた感覚は、1本か何本かの毛が切れた証。

刃物の切れ味が都合よく鋭すぎない程度に、毛と刃が当たった時には都合よく鋭いように。

神頼み、そう刃物の神さまに頼みながら。

ゴシゴシ、ゴシゴシゴシ…長い時間をかけて、眉毛をどんどん切っていく。

少しずつ眼球付近の隙間が開けてくるのを感じる。

そして、そのときがきた!

カパァッ!ボトッ

「うおぉぉぉっ」

私「こんにちわ!!」

妻子「わぁっ!!!」

顔面はベッチョベチョ、大量の汗 + 大つぶの涙。

そして荒れている感。しかし切り傷はなく、眉毛もマシっぽい。


でも左目のまつ毛と、右目の下まつ毛と、中央部の上まつ毛は、キレイさっぱり抜けていたよう。

しばらくもうろう、そして夢遊病者のようにウロウロ、落ち着いてから洗顔へ向かう。

さっぱりしてから、気持ちばかりのスキンクリーム。

それから、ブツを確認。

おぉ、こんな感じか!

タピ活ストローが一体化されたままなので、削り取る。

それから、少量の材料で穴を埋める。

余計な凹凸を削ったり埋めたり補正。

完成!

まつ毛がほとんどこいつに取られている(笑)


ということで、手抜きしたらしんどいですよという、しくじり先生の報告は以上。

この程度の苦しみなら平気だという方は、どうぞライフマスクではなくデスマスクの制作を!


川崎 アメーバオウンド 西村司ホームページ

このページはアメーバオウンドを用いた西村司の活動ログです。

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